SDGsの達成のために掲げられた17の項目の1番目「貧困をなくそう」について考えてみようと思います。
まず、前提として「貧困」について、どう定義づけられているのか
目次
【1】貧困の定義とは?
SDGsを考える前に
「貧困」とは、どのような暮らしのことを指すのでしょうか。
まず、貧困には2種類あるということを理解する必要があります。
「相対的貧困」と「絶対的貧困」の2つです。
(1)相対的貧困
相対的貧困とは、自分の暮らしている国や地域で暮らす人々の一般的な水準と比較して、貧しい生活を送っている状態を指します。
所得を基準にして判断するようになり、年金などを含む所得が、その人が暮らしている国の中央値の半分に満たない状態を指します。
日本のような先進国では、後で記述する「絶対的貧困」の人は、ほとんどいません。日本国内で「貧困」といった場合は、一般的に「相対的貧困」を指しています。
日本の場合、2022年(令和4年)「国民生活基礎調査」において、「相対的貧困」の基準となる「貧困線」、すなわち「等価処分所得((総所得 - 拠出金 - 掛金 - その他)÷ √世帯人員数)」の中央値の半分とする金額で、その額は127万円となっています。
この基準で示される直近の「貧困率の状況」の状況を一覧表で示した厚生労働省の資料は次のようになります。
2022(令和4)年「国民生活基礎調査の概要」
なお、世帯人数別では単身者世帯で124万円、2人世帯で175万円、3人世帯で215 万円、4人世帯で248万円とされています。
日本の相対的貧困に陥っている世帯の特徴について、国(内閣府・総務省・厚生労働省)が、2015年(平成27年)12月18日に公表した「相対的貧困率等に関する調査分析結果について」では、次のような人々と特徴を挙げています。
①世帯主年齢別では、高齢者が多い(全国消費実態調査では 60 歳以上、国民生活基礎調査では 70 歳以上)
②世帯類型別では、両調査とも、単身世帯と一人親世帯が多く、夫婦のみ世帯、夫婦と子どものみ世帯が少ない
③国民生活基礎調査において、郡部・町村居住者が多い
まず、①の高齢者が多い世帯の主な特徴は、年金のみで生活する人が多いということが挙げられます。
2023年(令和5年)の国民年金(老齢基礎年金)の満額は、795,000円となっています。
現役で働いていた頃、会社員や公務員だった人は厚生年金+基礎年金をもらえるので、まだ良いでしょうが、自営業だった人は国民年金しかもらうことができませんので、国民年金基金などに自分から加入していない場合だと、満額もらえたとしても年間で約80万円にしかなりません。
つまり、127万円の基準に47万円も少ないことになります。
厚生年金に加入していない自営業の人は、結局、会社員なら定年退職している年齢でも働き続けないといけなくなってしまいます。
ただ、高齢者の中には少ない年金の中で生活を切り詰めて生活している人も少なくありません。
このような低所得で困っている人々を救うため、日本には「生活保護制度」があります。
生活保護制度では、厚生労働省の定める暮らす地域ごとの「最低生活費」というのが定められており、世帯の人数、年齢などによって支給額に違いがあります。
ただ、ご自身の収入と生活保護費を加えると、国民年金の満額(年間)の795,000円を超える額が得られるようになります。
しかしながら、実際は「生活保護」という言葉を嫌がって、貧しい生活を送っている高齢者が多い状況にあります。
私自身、長年、地方公務員として働いていて、生活保護の受給について見てきましたが、「生活保護」という言葉に、「みっともない」とか「人生の負け組」のような印象を持つ人も多く、生活保護費以下の生活費で切り詰めた生活をしている人が潜在的に多くいます。
[1] 日本の貧困問題の解決策を提案
〈1〉生活保護制度の改善
日本の法制度において、国民からの「徴収」と「給付」について、明らかにスタンスが違います。
まず、「税金」や「年金保険料」などの徴収については、対象者全員から納期限を定めて徴収漏れのないようにしています。
納期限までに滞納すれば、督促状や催告書が送付されて、強制的に徴収されます。
一方では、「年金」や「生活保護費」の支給については、本人からの支払いの請求の申し出がなければ、国は支払ってくれません。
年金については、一応、受給対象者に請求してくださいというふうな通知が届きますが、やはり請求をしないともらうことができません。
最近の国の支給については、新型コロナの対策として、「特別定額給付金」として住民基本台帳に登録されている日本人及び外国人に一律10万円が支給されたことがありましたが、これも受給対象者が請求しなければいけなかったのを皆さんご存じでしたか?
私は過去に地方行政の真っ只中にいたので、国・地方自治体の「徴収」と「支給」のスタンスの違いについて肌身に染みています。
乱暴な言い方になりますが、徴収するときは漏れなく取り、支給するときは対象者に請求書の提出の手間をかけるという方法を取っています。
これが国民のための政治や行政と言えるでしょうか?すごく疑問に感じます。
誤解のないように言っておきますが、私は特に支持政党を持っているわけでもなく、その時々の政治や経済の状況などを見つめて、投票する議員や政党を決めています。
ただ、何でもかんでも「批判する」ような政党とは距離をとっています。
「批判する」という言葉をカッコでくくりましたが、この「批判」という行為は争いや戦争を生み出してしまう非常に愚かな行いであると思っています。
これについては、SDGsの目標解決の別の項目でお話させていただきますが「争い」は人類が生み出した最悪な行為だと思っています。
余談はさておき、日本の貧困問題を解決するため、「生活保護」の制度の根本的な見直しが必要です。
少なくとも、本人からの請求に基づいて、生活保護費を支給しているような現状の制度を改め、生活保護に該当するような人々には漏れなく支給するべきです。
そうすることによって、国民年金の年間満額の795,000円にも満たない額で生活している人を救うことが可能になります。
こういう話をすると財源の問題とかを語り始める人々がいらっしゃいますが、正直、国や地方自治体の財政運営の中で必要以上に支出されているものが散見されます。
一例として、よく話題になる議員の報酬です。
私が働いていた地方自治体では月額450,000円支給され、さらに夏と冬のボーナスもあるので、年収としては約700万から800万円になります。
議会の開催日数、普段の議員としての活動状況から定例会などの正式な会議への出席のほか、地元住民との調整や催しへの参加など、目に見えない議員活動もあり、報酬の額には賛否があるものの、やはり時間に縛られるサラリーマンの感覚では高額な報酬を得ていると言わざるおえません。
特に、都道府県や政令指定都市の議員の場合は、平均して月額約80万円もの報酬を得ています。
この報酬は、一般のサラリーマンの感覚からしたらボーナスにも相当するぐらい高額です。
都道府県や政令指定都市の議員は、単純に1年間の報酬として、80万円×12か月=960万円、これに加えて期末手当として、6月と12月にボーナスが支給されます。都道府県や政令市の場合、多くの市で直近のデータでは、年間で4.4か月分ものボーナスが支給されています。
したがって、ボーナスを含めた報酬全体では、960万円+352万円=1,312万円も支給されています。
これって、一般のサラリーマンからするとものすごい高給取りになりますよね。
さらに、議員の職にある人々は、一般のサラリーマンと違って、勤務時間が決まっていません。
議会の本会議や委員会などの会議がある場合以外は、それぞれが自由に政務調査等の活動を行ったり、家でのんびりしたり、仕事が別にある人はその仕事をしていたりもします。
結局、何十人もいる議員のうち、本当に議員としての仕事を一生懸命行っている人もいるでしょうが、実際に行っている時間がまちまちなのに高額の報酬が一律で支払われているところに大きな問題があります。
国会議員も同様で、地方議員よりももっともっと高い報酬をもらっています。
こういう部分にメスを入れて、日本で貧困で苦労している高齢者が請求なしで生活保護費をもらえる仕組みを構築すべきだと考えます。
本当にこれって日本の政治の大きな問題だと思います。
全ての国民が裕福な生活をしているときならまだしも、日本で貧困にあえぐ多くの人々がいる中で、政治家と呼ばれる人々が率先して身を削っていくべきではないでしょうか?
〈2〉ひとり親家庭への十分な支援
日本の貧困にあえぐケースのもう1つは、「ひとり親家庭」にある方々です。
令和3年度の厚生労働省の調査結果では、母子家庭の世帯は119.5万世帯、父子家庭の14.9万世帯になります。
さらにそれぞれの平均年収(母または父自身の収入)は、272万円と518万円となっており、特に母子家庭の世帯の収入は非常に低いことがわかります。
またひとり親家庭の子ども達は、日常生活で親の目が行き届かないこともあり、勉強よりも、ゲームなどに興味が行きやすく、結果、学校の成績も低い傾向に陥りがちです。
また、学校教育以外で、塾や勉強教材などに費用をかけることが困難になってくることから十分な教育を受けられないこともあり、結局、子ども達の将来にも影響します。
〈3〉国や地方自治体が無駄を見直すことで貧困層への手厚い支援を
前述の「議員報酬」の例のように、国や行政では見直すべき支出がほかにも山ほどあります。
日本の貧困を解決するために、まず最初に取り組むべきことは、国や地方自治体の支出の見直しです。
これに着手することで、救われる貧困層がいることを国や地方自治体の職員や議員には真摯に受け止めて対応を講じる必要があります。
(2)絶対的貧困
「貧困」には、さまざまな定義がありますが、国際的なものとして、世界銀行が定義する「1日を1.90ドル未満で過ごす人」が「極度の貧困状態」に置かれた人たちとされています。
2023年9月15日現在、1ドルは約148円なので、1日133円未満で暮らす人ということになります。
そうした状態の暮らしが「絶対的貧困」と言われます。
実は、日本の貧困である「相対的貧困」よりも、いまだに世界中にはびこる「絶対的貧困」の方が大問題です。
日本の相対的貧困の場合、国や行政がしっかり対策を講じれば解消することは十分に可能です。
しかしながら、絶対的貧困の場合、多くが、それらの人々が暮らす国自体がそもそも非常に貧しく、国の支援を受けることが難しい状態にあります。
この「貧困」の定義は、1990年(平成2年)に初めて定義されたそうですが、その当時は「1日1ドル未満」が基準となっていました。
健全な経済の発展は、緩やかな物価の上昇と賃金の上昇にあるとされています。
そのため、「貧困」の定義も衣食住などにかかる生活費の上昇を踏まえ、定期的に見直されています。
世界で一番貧しい国は?
みなさん、「世界で一番貧しい国」ってどこかご存じですか?
IMF(国際通貨基金)の「世界経済見直し(WEO:World Economic Outlook)」によると、世界で一番貧しい国は、アフリカ大陸の北東に位置する「スーダン共和国」になります。
「スーダン共和国」がどのような国か見てみましょう
スーダン共和国は、面積188万㎢(日本の約5倍)、人口4,281万(日本の首都圏の人口約4,400万人)、言語:アラビア語・英語、宗教:イスラム教・キリスト教、GDP189億ドル(国民一人当たり590ドル)、失業率13.3%、主な輸出品:石油・食用油・金・家畜(羊)、主な輸入品:航空機部品、さとうきび、医薬品、トラクター、小麦粉
主要な貿易相手国
輸出:中国・アラブ首長国連邦、サウジアラビア、インド、エジプト
輸出:中国、ヨルダン、インド、エジプト、アラブ首長国連邦